テスラモーターズ秘密のマスタープラン (ここだけの話です)

背景: 私は日中、SpaceX という宇宙輸送会社を経営していますが、一方ではテスラモーターズの会長として、マーティンや他のメンバーと協力してビジネスと製品戦略を練っています。また私は、テスラモーターズがただの事業計画で、社員がたった3人だった時からメインの出資者でもあります。

ご存知のように、テスラモーターズの最初の製品は、テスラ ロードスターというハイパフォーマンス電動スポーツカーです。しかしながら、私たちが長期的には、手頃な価格のファミリーカーを含む様々なモデルを生産しようと計画していることをご存知でない方も少なくはないでしょう。なぜこのような計画を立てているかというと、テスラモーターズの包括的な目的 (そして私がこの会社に出資している理由) が、採掘しては燃やす炭化水素社会から、私が主要な持続可能ソリューションの1つであると考えるソーラー発電社会へのシフトを加速することだからです。

それを実現するためには妥協のない電気自動車が必要不可欠であり、そのためにテスラ ロードスターはポルシェやフェラーリなどのガソリン スポーツカーとの直接対決で勝利を収められるようデザインされています。また、それだけでなく、プリウスの倍のエネルギー効率を誇ります。そうは言っても、このクルマが実際に世界のためになるのかという疑問を抱く人もいるでしょう。本当にこれ以上ハイパフォーマンス スポーツカーが必要なのか?実際に世界の二酸化炭素排出量を減らせるのか?

ノー、大して減らせない、というのがそれらの質問への答えです。しかしそれは、上でも少しほのめかした秘密のマスタープランを理解していただければ、的外れなことだということがご理解いただけると思います。ほとんどすべての新技術に共通して、初期の製品はその最適化が行われるまでユニットコストが高くつきます。これは電気自動車も例外ではありません。テスラの戦略は、まず初期段階のプレミアム価格を払える顧客のいる高級市場に参入し、それからできるだけ速く、新しいモデルを出す毎に大量生産、低価格化のできる市場へ進んでいくというものです。

あまり多くネタバレはしませんが、テスラの2台目のモデルは、テスラ ロードスターの価格 ($89,000) の約半分で買える、スポーティーな4ドアのファミリーカーになります。3台目のモデルはさらに低価格になります。急成長するテクノロジー会社として、できるだけ早くコストを下げて次の製品を市場へ出すため、フリー キャッシュフローはすべて研究開発に充てられます。つまり、テスラ ロードスター スポーツカーを購入した人は実質、ローコスト ファミリーカー開発の資金繰りに協力したことになります。

ここで、電気自動車について繰り返し取り上げられる2つの論点、バッテリーの破棄と発電所の排出ガス、に触れたいと思います。1つ目の問題への答えは簡潔なものですが、2つ目については少し計算が必要となります。

バッテリーは環境にとって有毒なものではありません!
デザートのトッピングとしてはおすすめできませんが、テスラモーターズのリチウムイオンセルは危険物に分類されておらず、安全に埋め立てできるものです。しかしながら、それをゴミとして捨てることはお金を捨てているのと同じことです。パッテリーパックは設計寿命である160,000 km分使用された後、リサイクル業者 (助成金を支給されていない) が買い取ります。その時点でバッテリーは一切使えないものではなく、容量が減っているに過ぎません。

発電所の排出ガス、あるいは「ロング テールパイプ」(この議論の詳しいバージョンについては、ホワイトペーパー をご参照ください。)

排出ガス対策ソリューションとしての電気自動車に対する反論としてよく挙げられるのは、電気自動車が二酸化炭素の排出を発電所に肩代わりさせているだけだというものです。それに対してできる明白な反撃は、水力、風力、地熱、原子力、太陽光などの二酸化炭素を排出しない 様々な発電方法 によって供給される電力網を用意することです。しかしここでは電気が、最近アメリカの新しい発電所で最もよく使われている天然ガスなどの炭化水素を使用して発電されるものとして話を進めていきます。

General Electric社のHシステム コンバインド サイクル ジェネレーターの天然ガスから電気を発電する発電効率は60%です。「コンバインド サイクル」とは、天然ガスを燃焼させることで電気を発電し、さらに廃熱を使って2つ目のジェネレーターを動かすための蒸気を生むシステムです。天然ガスの回収率と処理効率は共に97.5%、電力網を通した送電効率は平均92%です。そのため、原料が採掘されてからコンセントに届くまでの効率は、97.5% x 97.5% x 60% x 92% = 52.5%となります。

ボディーシェイプ、タイヤ、ギアのデザインは効率よりもパフォーマンスの高さを優先しているにも関わらず、テスラ ロードスターは1 kmあたり0.4 MJで、あるいはメガジュールあたり2.53 km走行します。テスラ ロードスターのフルサイクル充放電効率は86%、つまり、バッテリーを充電するのに100 MJ使用した場合、モーターに届く電力は86 MJです。

上記を合わせると、最終的な数値は2.53 km/MJ x 86% x 52.5% = 1.14 km/MJとなります。この数値を、一般的にエネルギー効率が高いとされているプリウスなどの車種と比べてみましょう。

ガソリン車の包括的な、原料が採掘されてからホイールに届くまでのエネルギー効率は、[ガソリンのエネルギー容量 (34.3 MJ/liter) − 精油と輸送により失われるエネルギー(18.3%)] x 燃費で計算されます。プリウスのEPA燃費は55 mpg (約23.4 km/l) なので、エネルギー効率は0.56 km/MJとなります。この数値はトヨタ カムリ (0.28 km/MJ) などの一般車両と比べると素晴らしい数値であると言えます。

ここで注意していただきたいのは、現在クルマに使われているハイブリッドという言葉は誤解を招く言葉であるということです。実際のところ、ハイブリッド車とは改造車でない限り、小さなバッテリーによるアシストの付いたガソリン車に過ぎず、その小さなバッテリーはガソリンエンジンにより充電されます。そのため、ハイブリッド車とは単純に、少しだけ効率の良いガソリン車とみなすことができます。EPA燃費が55 mpgと言っても、55 mpgを達成できるハイブリッドではないガソリン車があれば、それと一切変わりません。私の友人が言うように、世界中のすべてのクルマがプリウスになったとしても、石油に100%依存していることに変わりはないということです。

燃料別の二酸化炭素含有量はよく理解されています。天然ガスはメガジュールあたり14.4 g、石油はメガジュールあたり19.9 gの炭素を含みます。この排出レベルと車両のエネルギー効率を、参考としてホンダの天然ガス車と天然ガス燃料電池車も並べて比較すると、その結果は明らかです。

エネルギー源 炭素量 効率 二酸化炭素
排出量
ホンダ CNG 天然ガス 14.4
g/MJ
0.32
km/MJ
45.0
g/km
ホンダ FCX 然ガス−燃料電池 14.4
g/MJ
0.35
km/MJ
41.1
g/km
トヨタ プリウス ガソリン 19.9
g/MJ
0.56
km/MJ
35.8
g/km
テスラ ロードスター 天然ガス−電気 14.4
g/MJ
1.14
km/MJ
12.6
g/km

 

アメリカの発電所のジュールあたりの二酸化炭素排出量の平均を計算に用いたとしても、テスラ ロードスターは十分な余裕を持って他のクルマを凌ぎます。天然ガスと比べ、石炭の二酸化炭素含有量が多いとは言え、水素、原子力、地熱、風力、太陽光など二酸化炭素をほとんど排出しない発電方法によりオフセットされます。発電方法のミックスは地域により異なり、また時間と共に変化するため、ここでは比較するための目安として天然ガスを使用しました。

エネルギー ポジティブに
テスラモーターズでは自社のクルマと共に、他の企業の持続可能エネルギー製品の販売も促進していきます。例えば、太陽光発電メーカー SolarCity (ここも私が筆頭出資者です) からは、適度な価格とサイズのソーラーパネルなどを提供します。このシステムはパネルのサイズが小さいため、屋根の邪魔にならない場所に取り付けたり、カーポートとして設置することができ、1日あたり約80 km分の電力を発電します。

もし1週間の走行距離が560 kmに満たなければ、個人的な輸送に関しては「エネルギー ポジテイブ」を達成できます。これは、輸送のために使用するエネルギーよりも多くのエネルギーをシステムに返還することになるため、節約やネットゼロの一歩先を行くことです。

最後に、マスタープランを簡潔にまとめると:

  1. スポーツカーを作る
  2. その売上で手頃な価格のクルマを作る
  3. さらにその売上でもっと手頃な価格のクルマを作る
  4. 上記を進めながら、ゼロエミッションの発電オプションを提供する

これは、ここだけの秘密です。

タグ: