Teslaは衝突イベントを記録しますが、これは49 CFR 563.5に従います。同規則の定義によれば、衝突（collision）イベントとは衝突（crash）、つまり不可逆性の展開拘束装置が展開される物理的事象か、150ミリ秒以内に8 km/hの速度変化（Delta-V）のトリガーしきい値に達する、またはそれを超える物理的事象のいずれかです。Delta-Vは衝突時の車両速度変化を測定しますが、その衝撃を数値化するための衝突分析では広く使用されています。Delta-Vが高いほど車両とその乗員にかかる力が大きくなり、さまざまな衝突における衝撃を区別できる信頼性の高い指標です。

Teslaは49 CFR 563.5に沿って衝突事故を2つのカテゴリーに分けています。

1. 車両のエアバッグやその他の非可逆性の発火拘束装置が展開された状態では、展開の衝撃がより深刻になる傾向があります。こうした衝突事故はTeslaでは、車両安全性レポートで「重大な衝突事故」と呼びます。
2. 車両のエアバッグも何らかの非可逆性の発火拘束装置も未展開の状態では、展開の衝撃がより軽微な傾向があります（Delta-Vは150ミリ秒以内に8 km/hまたはそれ以上）。こうした衝突事故はTeslaでは、車両安全性レポートで「軽微な衝突事故」と呼びます。

衝突に至る5秒間のある任意の時点でFSD（スーパーバイズド）が有効になっていると、TeslaはFSD（スーパーバイズド）を使用して衝突が発生したとみなし、衝突率を計算して車両安全性レポートに記載します。このアプローチの根拠となるのが、ドライバーが危険の可能性を認識してから車両を手動制御するまでに要する時間です。この計算によって、FSD（スーパーバイズド）で報告された当社の衝突事故率が、システムが車両をアクティブ制御中に発生した衝突だけでなく、衝突直前にドライバーがシステムの作動を解除する可能性やシステム自動停止の可能性のある状況も捕捉できます。

Teslaが当社の事故報告において過失を特定することはありません。これは過失判定が主観的かつ複雑な性格を持ち、通常は状況、運転者の意図、適用される交通法規の詳細な調査が必要となるためです。衝突事故の原因となった人や要因（運転手、車両、環境など）に関係なく、すべての衝突事故を報告することで、Teslaはさまざまな運転モードや条件にわたって有意の安全性比較を可能にする整合的かつ客観的な評価基準を提供します。

Teslaは、当社のテレメトリで確認されたFSD（スーパーバイズド）衝突事故率を、アクティブセーフティ機能の有無に関わらず手動運転のTesla車の両方と比較します。2014年以降に製造されたすべてのTesla車には、自動緊急ブレーキ、正面衝突警告、車線逸脱警告、さまざまな衝突回避システムなどのアクティブセーフティ機能が搭載されています。Teslaのデータによると、アクティブセーフティ機能未搭載のTesla車と比較して、アクティブセーフティ機能搭載のTesla車では、衝突事故1件あたりの走行距離が大幅に長くなります。

米国の平均的な車両の使用年数が約12年であると同時に、アクティブセーフティや高度ドライビングアシストシステムが広く採用される以前のものであることを考慮すると、アクティブセーフティ機能未搭載のTesla車（つまり2014年以前生産のTesla車）は平均的な米国車との比較においてもっとも代表的なものと言えます。こうした車両は現在は市販されていませんが、全体で毎年数億マイルを走行します。

Teslaフリートは世界を走行する数百万台の車両で構成されるため、大規模な走行データが生成されます。車両安全レポートには、走行距離、道路分類、制御タイプを含む匿名の車両テレメトリの組み合わせが、安全に関わる重大なイベントテレメトリ（上記の定義のとおり、車両に重大または軽微な衝突事故が発生した場合に受信した車両識別番号に関連付けられたデータ）と合わせて掲載されます。テレメトリの規模を示すと、2025年第3四半期だけでTeslaは世界（中国を除く）の車両フリートから25億のテレメトリパッケージを受け取りました。

車両安全性レポートで分析および集計される車両テレメトリパッケージは、2種類の方法で掲載されます。

1. シフトレバーのパーキング時：車両は、最終の走行（またはドライブサイクル）からの匿名化された走行距離情報を含むデータパケットをTeslaサーバーに送信します。このデータでは、さまざまな制御タイプと道路分類を使用して走行距離を車両の種類ごとにTeslaに通知します。
2. 重大または軽微な衝突の検知時：車両識別番号に紐づけられたデータパケットがTeslaサーバーに送信されます。データのアップロードに失敗しても、走行情報および衝突情報は車両に保存され、接続が回復するとアップロードできます。

携帯電話の接続や車両通信システムの損傷（これらは一例にすぎない）などの特定の変動要因が、Teslaの特定のイベントのキャプチャに影響することがあります。重要なポイントとして、こうした変動要因がこの車両安全性レポートで分析されたすべてのTesla制御タイプに適用されるため、FSD（スーパーバイズド）と手動運転間の安全指標比較の妥当性が留保されます。

マップデータルーティングクラス、車線数、制御されたアクセスインフラストラクチャなどの道路特性に基づき、Teslaは道路を高速道路と一般道路に分類します。ローカリゼーション、マップ依存度、定義の差異を使用した当社の分類精度は高いものの、走行距離や衝突データにわずかな差異が生じる可能性があります。

FSD（スーパーバイズド）の安全上のメリットは、アクティブセーフティ機能の有無に関わらず手動で運転できるTesla車と比較するとはっきりします。同じテレメトリパイプラインを使用して同じフリート車両内で行われるため、もっともダイレクトで統計的に有効な比較設定です。

さらには、Tesla車は非Tesla車を運転する多くの道路利用者と道路を共有します。このため、米国の運転人口全体に対するFSD（スーパーバイズド）の安全性評価にも慎重です。これを定量化する手法として、最善の情報源である米国政府公開のデータを使用して公開衝突事故率の推定値を設定します。米国のベースライン平均値を設定するため、Teslaは以下に説明する米国政府のデータを使用して、総走行距離（分子）と衝突事故車両総数（分母）を推定しています。

米国政府は、検討のためにいくつかのデータソースを公開しています。総走行距離（分子）については、連邦道路局（FHWA）の車両走行距離（VMT）年次報告書（最新の発行物は暦年2023）が調査でよく使用される情報源です。衝突事故車両総数（分母）については、Teslaでは第一に全米の警察が報告した事故率を収集する米国道路交通安全局（NHTSA）の衝突事故報告サンプリングシステム（CRSS）、第二に少なくとも1台の乗用車が事故現場から牽引されたと警察が報告した衝突事故をサンプリングするNHTSAの衝突事故調査サンプリングシステム（CISS）、第三に全米の死亡事故を測定するNHTSAの死亡分析報告システム（FARS）を参照します。こうしたサンプルおよび報告システムでは、重軽傷者の有無にかかわらず少なくとも1台の乗用車が牽引された衝突事故をキャプチャするには、重大な衝突事故を追跡するというTeslaのアプローチともっとも近いCISSが衝突事故の重大度を取り扱う第一義的な資料として関わってきます。対照的に、CRSSはエアバッグなどのさまざまな拘束装置が未展開のインシデントを主にキャプチャします（たとえば、2023年のCRSSの衝突事故の約71.7%が物損のみ。その展開イベントは傷害に至りかねない重大性の高い影響との関係がより密接）。FARはさらに対照的です。致命的な衝突事故専用で、主に重大度が最大の展開インシデントおよび特定のオブジェクトタイプの非展開インシデントまたは検出難易度の高いインシデントのサブセットをキャプチャします。

こうしたすべての考慮事項に基づき、「米国平均」推定値を計算するため、TeslaではFHWAの車両走行距離（報告された全車両から）を、CISSインシデントに関係する車両の推定合計数で徐します（合計値はCISSレポートの表2参照）。

CISSおよびFHWAのデータベースには、Teslaのデータと直接比較できる高速道路および一般道路の内訳はありません。そのため、高速道路と一般道路での「米国平均」衝突事故率の内訳のベースラインを推定するため、Teslaでは高速道路と一般道路の運転の両方において手動運転のTeslaフリートで確認された衝突事故率全体の相対的な割合を計算しました。Teslaは次に、この割合を「米国平均」の重大衝突事故率に適用して、高速道路および一般道路での「米国平均」衝突事故率を推定しました。Teslaでは手動運転のTeslaフリートの軽微な衝突事故と重大衝突事故の割合を使用して、「軽微な衝突事故」に対しても「米国平均」の割合を推定するために同じ方法を適用しました。規模（米国車300万台以上）、地域（米国内の全州に存在）、オーナー構成（Model Yは米国では2023-2024年に非ピックアップトラックで売上第二位）、活動量（米国で年間300億マイル超）から考えて、こうした割合の推定にはTeslaの手動運転フリートが代表的な存在です。

データを操作すると、意図しないノイズやバイアスが入りかねないことをTeslaは重視します。米国平均値を計算し、Tesla衝突事故率と比較するために使用した方法の正確性と完全性を維持するため、Teslaは上記のとおり、データの操作または調整を最小限に抑え、必要な場合だけに限定しています。。それでも、Teslaと公開済みデータのデータ収集方法が異なるため、この方法には必要かつ不可避の仮定が含まれます。この仮定には、報告基準、未報告事故推定件数（物損事故の60%、人身事故の32%が警察に未報告とNHTSAは推定[Blincoe et al. 2023]）、連邦データベースのサンプル規模、フリート分布に関する制約が含まれる可能性があります。こうした制約の一部は米国平均の計算値を実際よりも高くまたは低く歪める可能性があります。この制約があるにもかかわらず、FSD（スーパーバイズド）を使用した実際の安全性の向上は、明確で否定のしようがありません。これは、FSD（スーパーバイズド）使用のTesla車と手動運転のTesla車を直接比較すると明らかです。米国の推定平均値が（制約はあったとしても）その結果に至ることは必然です。

Teslaが衝突テレメトリを収集するのは、実際の衝突事故の実相を把握し、防止または軽減するためのソリューションを開発するためです。

このWebページにはさまざまなな日付範囲のデータを示しています。FSD（スーパーバイズド）全体の走行距離は2020年から公開していますが、これはFSD（スーパーバイズド）の発売時期に合わせたものです。レポートが更新されるたびに直近の12か月間の衝突事故率指標が使用されますが、これは四半期ごとの数値です。

Teslaはこのレポートで四半期ごとに衝突事故率を更新します。最新の動向や進展に関連させるべく、このデータには12か月間の走行距離と衝突事故件数が反映されます。

Teslaの衝突事故報告方法は、車両システムから直接収集された自動テレメトリデータによるものです。このアプローチにより、数百万台の車両間の衝突事故を客観的に検知します。この他の乗員の傷害情報などのデータはドライバーの自主的報告を通じて寄せられますが、一貫性はなく、医療情報保護法令によりTeslaはアクセスできません。

Teslaはその代わりに、衝突事故頻度やエアバッグ展開率などの客観的かつプログラム的な指標を重視します。エアバッグ展開件数からわかる衝突事故の重大度は信頼に値します。たとえば、エアバッグ展開しきい値は乗員の傷害リスクが大幅に高まる衝突事故衝撃度で作動するように特別に設定されました。非展開衝突事故とは一般に、エアバッグが展開不要だった衝撃度の低い衝突事故を意味します。これらを組み合わせると、有意かつ客観的な安全性指標となり、Tesla車フリート全体で一貫性をもって測定できます。四半期ごとの定期アップデートに加えて、Teslaは車両安全性レポートを追加の分析結果、統計、報告方法の改善に取り組んでいます。

Tesla車の衝突安全性にについて詳しくはこちらから。

NHTSAの『Standing General Order on Crash Reporting (SGO)』では、自動運転システム（ADS）または高度ドライビングアシストシステム（ADAS）を使用して走行する車両に関連した衝突事故をさまざまな報告基準に該当する衝突事故が発生してから30秒以内に報告するように義務付けています。ただし、SGOはメーカーに対して、ADASまたはADSシステムに関わる衝突事故に関する通知を受け取るためのテレメトリシステムの開発は義務付けていません。この車両安全性レポートに記載された衝突事故テレメトリシステムを使用して、TeslaはSGOなどへの連邦政府報告義務を補完します。

Teslaは、車両の接続性と能力を最大化するよう設計されています。当社はリモートテレメトリを使用して車両フリートから学習し、安全性に関わる重大イベント（重大または軽微な衝突事故など）に関する通知を受信するなど、様々な設計上の決定に使用します。対照的に、車両の接続性が低いその他車両のメーカーはその大部分が、それらメーカーの車両が含まれる衝突事故が発生しても、お客様から車両に関する情報を提供されるか訴えられない限り車両データを受け取ることはありません。

SGOの報告スキームの結果によると、すべての車両メーカーの総走行距離よりもTesla車両間の衝突事故が高いことが示されましたが、実際にはTeslaの衝突事故報告のほうが多いのは、Teslaの顧客フリートが大規模、アクティブ、フルコネクテッドであるからにすぎません。データが正規化されていないことが、このSGOの好ましくない結果に拍車をかけました。SGOはメーカーに対して明確な衝突事故件数を報告するよう義務付けていますが、米国国内の道路を走行した車両数やその走行距離の報告はメーカーに義務付けていません。はっきりした衝突事故件数だけで考えれば、購入台数や使用量が増えれば衝突事故件数が増えると考えられますが、実際にはインシデント率は下がっているかもしれません。

お住まいの国でTesla車が販売されているのにFSD（スーパーバイズド）を購入できない場合は、当該国では地方自治体から明示的に承認される必要があるためです。規制当局の承認を保証するためにTeslaは世界各国政府と協力しており、米国、カナダ、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランドで無事発売を開始しました。正確なタイムラインは提供できませんが、現在も順調に推移しています。承認されると、ワイヤレスソフトウェアアップデートでFSD（スーパーバイズド）が対象車に送信されます。